アットポーチ誕生のきっかけとこだわり

アットポーチ誕生のきっかけ

私は、海外40か国・国内47都道府県を旅した生粋の旅行好きです。
身軽に動くことはもちろん、潔癖症のために『荷物を床に置きたくない』『フライトの際に荷物を預けたくない』というこだわりから、長期の旅行であっても腕に抱えられる程度の小さな荷物ででかけています。
街歩きをそのまま楽しむことも多く、「荷物に煩わされることなく快適に旅したい」という想いは人一倍強くありました。

さまざまなオーガナイザーがありますが、納得のゆくアイテムには出会えずにいました。
洗濯ができない、容量があわない、かえってかさばる、など、求める条件を満たすもはなかなかないのです。

一般的なものではサイズが大きいため、かさばらなくて洗えるものをと巾着を愛用していましたが、紐が邪魔だったり移動中に崩れたり片寄ったりしてしまうことに不満を感じていました。
ここ近年はタブレット端末を携帯することが増えたので、衣類も端末と並べて立てられたらスッキリするのになぁという思いも加わり、洗えてかさばらない布を使って形状の保てるものはないかと、イメージを膨らませておりました。

そんな中、新型コロナウィルスの流行による緊急事態宣言が私にとっての転機となりました。
家に閉じこもる中、旅への想いを募らせ、理想のポーチを自らの手で作ることにしたのです。
そして、荷物をコンパクトにするために試行錯誤してきた経験を生かし、自らが理想とするオーガナイザーを形にしたのが < アットポーチ > です。

試作品を実際に使ってみると、今までにないスタイルのパッキングが可能になり、その快適さに驚かされました。
そして、同じ思いを抱える多くの人に共有してほしいという思いから、製品化を決意しました。

製品化にあたり、意匠登録の手続きを進めました。
申請から約3か月の審査期間(ちょうど最短スケジュールのタイミングで出願できたので)を経て、無事「意匠権」を得ることもできました。
この手続きの中で作成したアットポーチの使用時の断面図が「@」に似ていることに由来して、「@pouch<アットポーチ>」と名付けました。

引き算の発想でシンプルさを極めたミニマルなつくり

身軽に軽やかに旅をするためには、重さはもちろん、電車やお店で邪魔にならないよう、荷物はできるだけ小さくしたいから、「重さ」も「かさ」も増やさない。
そんなオーガナイザーを目指し、本体そのものの重さやかさばりを極限まで減らすため、装飾はもちろん、ボタンやファスナーなどの留め具を省くことは、譲れないこだわりでした。
そして、使うたびに洗濯機で洗えるように布素材であることも。布一枚で衣類をしっかり包むこと。それを条件にイメージを固めていきました。

従来のオーガナイザーは、スーツケースやキャリーケースでの使用を前提に、たくさんの衣類を収納したり、ケースの中で仕分けることを目的としたものがほとんどです。
小さいサイズがあっても、容量が少ないだけでマチが大きかったりとバッグには収納しづらい形状だったりします。
海外旅行や家族旅行であれば、それでよいのですが、週末旅やひとり旅では、いつものバッグに着替えだけを入れてでかけるようなことも少なくありません。
そんなシーンで活用できるよう、バッグやリュックに収納しやすい形状を追求しました。

バッグやリュックでは、たいては動いている間に衣類はかた崩れして底の方に片寄ってしまいます。
そして、そんなバッグの中での乱れは、キャリーケースなどと違って、バッグのシルエットにも持ち心地の悪さにもダイレクトに影響します。
なので、ただ容量を小さくするだけでは快適さには繋がりません。
バッグやリュックでの携帯を快適にするには、形が崩れないこともポイントであると思い至りました。
こうして、衣類をしっかりと包んでフラットな形状を保ち、なおかつ縦の空間も無駄にしないよう立てて入れられるオーガナイザーにしようとイメージが仕上がりました。

とはいえ、薄さ×軽さ×自立するの3つの機能を兼ね備えるというのは容易ではありませんでした。
たとえば薄さや軽さを優先すれば崩れてしまうし、崩れないようにと硬い素材を使ったりマチを設けたりすれば重くなったりかさ張ってしまうのです。
留め具を用いることなく衣類をしっかり包み、かつ自立できるようにするには、適度な張りと伸縮性のある素材が不可欠で、この生地探しが一番難儀でした。
なかなか期待する張りと伸縮性を備えた生地が見つからず、生地問屋や小売店、メーカーをめぐるなどして探すこと約1年。
方法を変え、生地を変え、いくつもの試作を重ねた末に、やっとコレだ!という生地と出合うことができました。
この生地のおかげで、布一枚で衣類をしっかり包み込む究極のミニマリズムを実現することができたのです。

そして、極限までのシンプルさを実現しつつ、長く愛用していただくため、飽きのこないよう、それでいて無機質にならないよう、アクセントカラーをステッチにあしらいました。
そこにあるだけで素敵な気分にしてくれる一輪挿しの花のような…そんな旅の相棒になれたらと思います。