アットポーチが生まれた理由
旅するとき、私はできるだけ身軽でいたいと思っています。
荷物は小さく、移動は軽やかに。
フライトで荷物を預けず、到着後はそのまま街歩きを楽しみたい。
そんな感覚を大切にしながら、旅を重ねてきました。
そのため、長い旅でも、着替えは巾着やポーチに入れ、
できるだけコンパクトな荷物で出かけていました。
けれど、
着替えを入れた巾着が崩れる。
ポーチがバッグの底で片寄る。
取り出すたびに整え直す。
ひとつひとつは些細なことですが、
その積み重ねが旅気分に薄い影を落としていました。
荷物が小さくまとまっていても、
それだけでは心地よく持ち運べるわけではありませんでした。
荷造りした状態が、そのまま保たれていること。
バッグを開けるたびに、気持ちよく取り出せること。
荷物に気を取られず、移動そのものを楽しめること。
自分が求めていたのは、そんな心地よさだったのだと気づきました。
そこで改めて、さまざまなオーガナイザーを探してみました。
けれど、なかなか納得のいくものには出会えませんでした。
容量が合わない。
かえってかさばる。
洗濯機で洗えない。
小さいものを選んでも、厚みでバッグが膨らんだり、
紐や留め具が邪魔になったり、バッグの中で片寄ってしまう。
そんな違和感が少しずつ積み重なるうちに、
本当に欲しいものの輪郭が、少しずつ見えてきました。
転機になったのは、旅に出かけることが難しくなった時期でした。
旅への思いを募らせながら、
「理想のポーチを、自分の手で形にしてみよう」
そう考え、試作を始めました。

開発者ノート①
荷物をできるだけ小さくしたい理由は、身軽でいたいからだけではありませんでした。
潔癖症なこともあり、荷物を床に置きたくない。フライトでも、できるだけ荷物を預けずに機内に持ち込みたい。
ひとり旅では、トイレの時に誰かへ荷物を預けることもできません。そのため、トイレのフックに掛けられる大きさに収まっていることも、快適に移動するための大切な条件でした。
そうした理由から、長期の旅行でも、腕に抱えられる程度の大きさに収めています。
アットポーチは、衣類を持ち運ぶためのオーガナイザーです。
けれど、ただ入れるためだけのものではありません。
衣類を気持ちよく包み、心地よく持ち運ぶための存在でありたい。
必要なものを必要な分だけ、気持ちよく持ち運べること。
たくさん入ることよりも、移動そのものが快適になること。
旅だけではなく、日常の移動にも自然になじむこと。
そのために大切にしたのが、
整うこと。
洗えること。
軽やかであること。
この3つの価値です。
整う
アットポーチが最も大切にしているのは、「整う」ことです。
バッグで快適に持ち運ぶには、ただ小さいだけでは足りませんでした。
移動中も形が崩れにくく、バッグの中で片寄らず、収まりよく持ち運べること。
さらに、限られたバッグの空間を無駄なく使えることも大切でした。
バッグの中は、面積だけでなく高さも限られています。
横に寝かせるより、立てて収納できる方が、限られた空間をすっきり使えます。
そのため、衣類をしっかり包み、フラットな形を保ち、
立てて収納できることを設計の軸にしました。
荷造りしたときの整った状態を、移動中もできるだけ保てるように。
それが、アットポーチの考える「整う」です。

開発者ノート②
従来のオーガナイザーは、スーツケースやキャリーケースでの使用を前提に、たくさんの衣類を収納したり、ケースの中で仕分けたりすることを目的としたものがほとんどでした。
小さいサイズがあっても、容量が少ないだけでマチが大きく、バッグには収納しづらい形状のものも少なくありませんでした。
週末旅やひとり旅では、いつものバッグに着替えだけを入れて出かけることもあります。
そんな使い方に合うものを考えたとき、バッグやリュックの空間を無駄なく使え、崩れにくく、立てて収納できる形を目指しました。
洗える
もうひとつ大切にしたのは、洗濯機で洗えることです。
使ったあとに洗濯機で洗えること。
特別な手入れがいらないこと。
私自身、潔癖症なこともあり、
使ったあとは衣類と一緒にそのまま洗濯機で洗えること。
それは、最初から外せない条件でした。
軽やか
そして、軽やかであること。
これは、アットポーチの出発点でもあります。
荷物そのものが重くならないこと。
かさばらないこと。
バッグのシルエットや持ち心地を邪魔しないこと。
アットポーチには、
ボタンもファスナーもありません。
余計な仕切りもありません。
布一枚で、衣類を包む。
目指したのは、そのシンプルな形でした。
余計なものを足さず、必要なものだけを残す。
そんな引き算の発想が、アットポーチのものづくりの中心にあります。

開発者ノート③
発想の片隅にあったのは、風呂敷のミニマルさと、巾着の手軽さでした。
巾着は手軽ですが、口を絞ると上の部分が余り、紐が邪魔になることがあります。移動中に形が崩れたり、バッグの中で片寄ったりすることもありました。
一方、風呂敷は自由に包めて、使わないときは小さく畳めます。ただ、結び目ができ、その結び目が意外とかさばります。
そのどちらにも魅力があり、どちらにも少しだけ物足りなさがありました。
目指したのは、そのちょうど間にある存在です。
留め具を使わず、衣類をしっかり包み、バッグの中で収まりよく形を保つ。
その発想が、留め具のない、薄く軽やかな今のアットポーチにつながっています。
このシンプルさを形にするまでには、多くの試行錯誤がありました。
薄さや軽さを優先すると、形は崩れやすくなる。
崩れにくさを優先すると、重く、かさばる。
さらに、留め具を使わず包み、
自立する形を保つには、
生地の張りと伸縮性が欠かせませんでした。
理想の生地を探し、方法を変え、
何度も試作を重ねながら、
ようやく今の形にたどり着きました。
布一枚で衣類を包み、フラットな形を保ち、立てて収納できる。
一見シンプルに見えるこの形は、そうした積み重ねの先に生まれたものです。
完成した試作品を実際に使ってみると、
今までにないスタイルのパッキングができ、その快適さに自分でも驚きました。
この心地よさを、同じような感覚を持つ人にも届けたい。
そう思い、製品化を決めました。

開発者ノート④
理想の生地に出会うまで、およそ1年。
生地問屋や小売店、メーカーを回りながら、期待する張りと伸縮性のバランスを持つ生地を探し続けました。
いくつもの試作を重ねた末に、ようやく納得できる素材にたどり着きました。
極限までシンプルでありながら、長く愛用してもらえるものにしたい。
だからこそ、機能だけでなく、使うたびに少し気持ちが明るくなるような存在であってほしい。
そんな思いから、ステッチにはアクセントカラーをあしらっています。
旅を快適にするために必要だったのは、
荷物を小さくすることではなく、整えることでした。
衣類が整う。
バッグが整う。
気持ちまで軽くなる。
そんな体験から生まれたアットポーチですが、
その心地よさは旅だけのものではありませんでした。
出張にも。
帰省にも。
習い事にも。
ジム通いにも。
週末の外出にも。
荷物が整うことで、移動が少し心地よくなる。
アットポーチが届けたいのは、荷物だけではなく、その先にある快適な移動の時間です。

なぜ「@pouch」なのか
製品化にむけて意匠登録を進める中、使用時の断面図を描いていました。
その形が「@」に見えたことから、「@pouch<アットポーチ>」という名前が生まれました。
